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『おたく』の研究への反応と反論 新宿マイナークラブ1983年9月号


『おたく』の研究への反応と反論 新宿マイナークラブ1983年9月号漫画ブリッコの世界

「おたくの研究」への反応と反論

「新宿マイナークラブ」(読者投稿欄)
1983年9月号

『おたくの研究』に対しては、当然のことながら読者の怒り・反感の投書が殺到したようです。

編集としても静観し続けるわけにも行かず、1983年9月号の読者投稿欄「新宿マイナークラブ」で代表的な読者の反応を掲載するともに、大塚氏が見解を述べています。

注目すべきは、大塚氏も「おたく」の反社会的な部分は揶揄するに足るものとしている点、また大塚氏の意見を「編集部の公式見解ではない」としている点です。中森氏はその後の述懐で大塚氏から長文の叱責を受けたとしていますが、個人的には大塚氏の反論の文面からは(少なくとも表面的には)できるだけ冷静に反駁しようとしているように思われるのですが、いかがでしょうか。

なお、ここで取り上げられている読者投稿ですが、誤字についても本誌掲載時にそのまま掲載されており、当サイトでも原文を継承しています。また、投稿者の氏名については当方の判断で削除しております。

なお、中森氏の連載が終了した1984年6月号の読者投稿欄で大塚氏は再び「おたく」という言葉に対する見解を発表しています。それについては、

「おたくの研究」への反応と反論 「妥協の森」1984年6月号に掲載しました。

●拝啓中森明夫様
 あなたの『おたく』シリーズは大
変興味深く読ませていただいており
ます。もしかしたらと思って、東京
おとなクラブの1号、2号を調べて
みると、宝島少女、ポンプ文通少年
少女など、特定の傾向を持つ集団の
ことを誹謗する文章をお書きになっ
ていたのはやはりあなたでした。そ
うすると、何かの週刊誌でたまさか
目にした渋谷のマンガ専門店および
そこにたむろするマンガマニアたち
のことを書いた文章はあなたの手に
よるものではないでしょうか。まあ、
これは推測にすぎませんが。
 さて、この丸っこい字体からもお
わかりかも知れませんが、私は『お
たく』の1人であります。自分では
コミケットやフリスペに行くのは、
おもしろい絵を描く人を探すため、
アニメーションは立派な芸術の一形
態と考え、私なりに真面目にこの趣
味を考えています。しかし私は銀ブ
チメガネのつるを額に喰い込ませる
白ブタでありますし、マンガマニア
のアニメファンと、おたくの条件に
は完璧にあてはまっております。
 私もその手の上映会等にくる人た
ちが、みんな同じ雰囲気を持ってい
るのには気ずいていました。とある
上映会で開場を持って並んでいると、
ああこいつは列の後ろに並ぶな、こ
いつはただの通りすがりだなと一目
でわかるのにはびっくりします。気
持ち悪いなーと思いつつ、自分の格
好をみるとそいつらと全く同じであ
ることに愕然するのでありました。
 しかし、しかしであります。(何か
変な文体になってきたな)我々は何
かいけないことをしたのでしょうか。
あのように誹謗、中傷されるような
ことを。我々『おたく』だけではあ
りません。宝島少女、ポンプ少年は
いったいどのような犯罪的、反社会
的な行為を行なったのでありましょ
うか。たしかに我々は気味悪い存在
です。ああ、あなたがたは「キモイ
連中」と呼うのでしょうか。とにか
く見苦しいことは確かです。不快で
あるかもしれません。そして、不快
であるというだけで、我々は社会か
ら排斥されなければならないのでし
ょうか。
 あえて言わせていただくなら、あ
なたの文章は身体障害者のことを指
して、いかにそれが不快な存在であ
るか述べ、自分は健常者だと胸をは
っているようなものです。
 あなたも何らかの集団の一人だと
いうことに気がついでおられるでし
ょうか。そうです、あなたのような
言動を行なう人は他にもたくさんい
ます。そうして、その集団は他の集
団のことを蔑むことによって、相対
的に自分たちの位置を高くし、そう
して自己満足のニヤニヤ笑いを浮べ
ているのです。
 『おたく』たちを弁護することは、
ここではあえてしません。私もその
一員であるから、私は『おたく』の
痛みもよくわかるのですが…。
 私があなたにとって不快であるの
と同様に、私もあなたがキモチワルイ
です。
 あ、それとも不快にされた分だけ
不快にしかえそうというわけなのか
な。       (全文掲載)
  東京都中野区新井 ××××

 「おたくの研究」に対する反論の
文章は、実はケッコー沢山来てたの
ですが、感情に流されて自己破綻を
きたしているものばかりで、載せる
には至らなかったのですが、多少論
旨は不明快だけど、ようやく読むに
たるものがきたので、ここに全文掲
載します。
 さて、私の意見です、「おたく」の
人間に対しては、私も不快感を抱く
ことがしばしばあります。それは中
森君の書いているように、無個性で、
やたらと群れたがり、相手の気持ち
を顧みない態度によるものです。こ
れは十分にからかうに足るものだと
思います。からかってほしくないな
らば、自分たちの「痛み」というの
を説明して欲しいような気がします。
まあそれでも同じような気はします
が。
 一方中森君の方も困ったものだと
思っておりました。××君のいうよ
うに、中森君ももある意味で「お
たく」の一員であるという自らの立
場が分かっていないだろうからです。
相手の立場をからかうなら、自分の
立場をふまえてからでないと、単な
る誹謗中傷に終わってしまいます。そ
の意味で非生産的な中森君の文章は
困ったものだと思い、改善を彼らに
求めておりました。
 どちらにしても、この問題はなか
なか面白いので、これからもあつか
いたいと思います。賛否両論、お手
紙は「新宿マイナークラブ おたく
係」迄。頭のいい文章を待ってます。
 なお私の意見は編集部の統一見解
ではありません。それから今月号の
「おたくの研究」が休載したのは編
集部とは無関係な、彼らの判断によ
るものです。