Home » 「漫画ブリッコ」資料館 » 『おたく』の研究 岡崎京子・桜沢エリカはなぜ『ブリッコ』でウケないのか

『おたく』の研究 岡崎京子・桜沢エリカはなぜ『ブリッコ』でウケないのか


『おたく』の研究 岡崎京子・桜沢エリカはなぜ『ブリッコ』でウケないのか漫画ブリッコの世界

岡崎京子・桜沢エリカはなぜ『ブリッコ』でウケないのか

中森明夫
(1984年1月号)

※下記の文章について
この文章は「漫画ブリッコ」内において発表された文を当時のまま掲載したもので、当サイトのポリシー・意図を反映したものではありません。
できれば先にこちらをお読みください。
また、この文章の著作権は、中森明夫氏にあります。

 非生産的な中森明夫です(笑)。イエ~イ!元気でやってるかい。5
か月ぶりの登場だぜえ。『ブリッコ』じゃ3回ほど「おた○の研究」っ
てのを連載して反響いちぢるしかったんだけど、どうやらおた○っての
は差別用語に指定されちまったらしく使えなくなってしまったのだ。で
まぁこーゆー場合、言い換えとゆう手段があったのです。ホラ、口が不
自由な人とか、目が不自由な人ってあるでしょ、そういう言い換えでい
くと、お○くってのは、現実感覚の不自由な人、ファッションセンスに
不自由な人、友達の不自由な人、明るさに不自由な人…ダメだ、なんか
ますます差別っぽくなっちまった。身障者を笑う健常者の中森です(笑)。
宝島少女、ポンプ少年とともに女子大生もバカにする中森です(『東京
おとなクラブ』3号買ってね)。
 いけね、本題に移ろ。ハッキリ言ってぼく岡崎京子ちゃん桜沢エリカ
ちゃんともにダ~イスキ。彼女達のセンスあふれるシティ派感性キラキ
ラまんがのどこをどう突っつけば「おまえらなんか私についてけないだ
ろー、どーせイモじゃねーかという姿勢」(12月号読者欄)なのだ!!被
害妄想もいいとこだぜ、このおた…、おた…、おたふく!!
 でもね、たしかに『ブリッコ』読者が彼女達のまんがに反感持っちゃ
うってのも分かるよーな気もする。11月号の岡崎京子ちゃんなんて「や
っぱ不能・マザコン(童貞をふくむ)ロリコンは少女達にはムッ!とく
るぜ」だもんな。
これは「ブリッコ」誌上で行う発言としてはソートーにカゲキで、『お
た○の研究』なんかよりよっぽどキツイぜ。だって中森明夫に嫌われる
のなんてなんとも思わないだろーけど、キョービの女子高生達に嫌われ
ちゃったわ、やっぱおた○だって傷つくよな。人気投票ワーストに輝く
桜沢エリカちゃんのまんがだって、自らの意思でへーきでフリーセック
スしちゃえるキョービの女子高生達のお話しなんだもの、おた○っての
はホントこのテのまんがには反感持っちゃうのだね。それは彼女達の描
く秀れて現実感覚の供った感性キラキラ少女達の世界が、彼らが現実の
少女達に抱く果てしないコンプレックスを想起させちゃうからだろう。
二次元空間に描かれた少女なら、決して自分を傷つけることも侮辱する
こともない。まして、そーいった弱い男のコ達の欲望を充分に満足でき
るようにキャラクターやストーリーが設定されていれば、彼らがそこに
向かうのも必然といえる。
 ところが京子ちゃんやエリカちゃんのまんがの登場人物達ときたら、
それこそそういったおた○まんがと対極にある世界の女のコ達なんだよ
ね。そしてそんな女のコ達が現実に街にはいっぱい現れてるのだよ。ホ
ント街ではキラキラピカピカ発光した女のコ達が、それこそパソコンゲ
ームの電子音さながらに、キュンキュン音をたてながら元気しちゃって
るんだけど、そーゆーのってとてもわくわくすることだと思わないかい?
ちょっと触れるだけでポップコーンが弾けるみたいな反応を示す鋭敏な
感性を持った女のコ達、たとえばぼくは戸川純や刈野カオリや甲田益也
子や根本聖子やなんかが大好きなのだ。
 そして、まともな服はこれしか持ってないとばかりに中学時代の制服
を着ておとなクラブ編集室に遊びにくる岡崎京子ちゃんや、新宿駅の出
口表示人形エッキー君が撤去されたのに逆上して駅長室に押しかけた桜
沢エリカちゃんの感覚とゆーものにものすごく期待しているし、彼女達
のまんがに接すると、もうすでに何かが起こりつつあるのではないかと
ゆー予感、来るべきものへのある予感を感じてとてもわくわくしてしま
うのである。