美少女コミックはナボコフを超えた?
(週刊読売1983年9月18日号)
下記の文章は雑誌「週刊読売」の1983年9月18日号に掲載された「漫画ブリッコ」を紹介した記事です。
内容的には、この雑誌の読者層であるサラリーマンのお父さんのための「ススんだ若者文化紹介」というもので、紹介のされ方も通り一遍ではありますが、少なくとも1983年の時点で「美少女コミック」というカテゴリーが一般メディアも看過できないぐらいの影響力を持っていた、とは言えると思います。
ちなみに、記事中の擬音は寄生虫「MCシスターの部屋」より、イラストは洋森しのぶ「BLUE GLASS SERENADE」で、いずれも1983年9月号から採録されています。
美少女コミックはナボコフを超えた?
ナボコフの小説「ロリータ」は、美少女が中年男性を魅力のとりこにし、破滅させてしまうというストーリーだが、この作品が「ロリコン(ロリータ・コンプレックスの略)」の語源だというのは常識。その落とし子ともいうべきものが、ここに紹介する”美少女コミック”ではなかろうか。いま中高生の間で大ブームなのである。
ルーツは大学の漫画同人誌だが、すでにこのブーム、商業ベースに乗り「レモンピープル」(あまとりあ社)、「漫画ブリッコ」(セルフ出版)といった専門誌も出回っていて売れ行き好調。
どれも一見、少女漫画風メルヘンタッチの表紙。が、中を開くと、リアルな女性器やあからさまな性描写のオンパレード。例えば、「あ、あ・・・、お・・・・姉ちゃん・・・・。あたし・・・・もう・・・・だめ」「だめって・・・・?」「ひざのちからが・・・・、あ、あ――っ、そんな・・・・そこ・・・・あっ――っ! ふぐうっ!」という具合。日本のコミックも欧米並み(?)になったのかと、思わず感心してしまう。
ストーリーのほうも、抱きしめたくなるようなかわいらしい少女たちが、SM、レスビアン、オナニーと大人顔負けの過激さで登場。われわれオジンとしては、少女のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていくのを感じないわけにはいかない。
おまけに下手なエロ漫画よりも上出来のエロティシズムがちらほら。こんなもの本当に中高生が読んでいるのだろうか、と取り越し苦労までしてしまう。
この世界、少年少女だけに独占させておく手はない。一読の価値あり。
(週刊読売1983年9月18日号133P「おもしろ本棚」より)